|アルバムについて|

伊藤敏博です。

およそ10年振りのオリジナルアルバムです。
月並みですが、振り返ってみると10年は「アッ!」と言う間。
コンサートやイベント、ライヴ、ラジオのパーソナリティー。
そしてシングルCD数枚、ぼちぼちと過ぎてゆきました。
怠けつつも曲作りも少々……。
と書けば「伊藤は坦々とマイペースで暮してきたんだな」と思われるかも知れませんが、半分YES、半分NOです。
「うまく行かない事々の葛藤」「人生これでいいのか?的な悩み」等々、一人前に携えて現在も生きています。

今回は「サヨナラ模様」の呪縛(?)を解きほどき、それらをテーマに歌にしました。
こんな自分に響くようにと歌ってみました。

だから「なぜ?」と聞かれたら「歌いたい事があるから」としか言い様がないのです。
僕が感じている「気分」は僕だけのものじゃなく、「世代的な気分」なのではないかとナントナク思っています。
この様な楽曲に共感を感じてくれる人が沢山いらっしゃる様な気がするのですが……。

是非一度聴いて試してください。
全11曲、聴きごたえと共に、あなたの心に響いてくれれば嬉しいです。


アルバムについて

|New Album について|


「ジャケット」

ボクの友人(先輩)である富山在住のデザイナー<大和 温(やまと あつし)>氏の作品。
「夕陽の中にボクがいるイメージ」と提示したところ「夕陽をつかまえている伊藤」を表現してくれました。
タイトル<Re:〜>の<:>と夕陽が連動して沈みゆく様が出されています。
裏ジャケの腕と手はボクの、です。何かを計っている様な仕草さは「自分の物差しで見つめ考える」を表しています。
歌詞カードの最後のページは「漂流、もしくは砂浜に打ち上げられた空き缶に住みついたヤドカリ」です。
このイラストからアナタは何を感じてくれますか…?

M1 「再生」

曲は元アラジンの<高原 兄>氏。
ワライコンサートキャラバンに来て頂いた方々にボクらからのささやかなお土産を、という事でふたりで作りました。詞が先です。

M2 「電子メール・ふる里便」

フォルクローレ調の曲はともすると懐古的な、つまりただ古いだけととらえられかねないのですが、そこにあえて現代的なツールである<電子メール>をもってきました。
古い価値観、ここで父親が言っている「人情、愛情〜」ははたして古いからと言って捨て去るべきものなのか…。ボクは現在だからこそ思い直してみるテーマなのではと考えて書きました。
一昨年、読売新聞の東京ローカル版の特集取材をして頂いた時、クローズアップされたテーマです。記者の村田雅之氏と東京のあちこちを漂流しながら…。

M3 「黄昏れ航く」

黄昏れに舟を出していく......。
また頑張れそうだ、しかし新たな夢(目標)を実現するには......残された時間と情熱は......。
海で一昨年亡くなった漁師の父はガンコでキビシくて、ユウズウの効かない男でした。その分、何ものにも動かされない確固たる自身の価値観の元、生きていた様に思えます。(今、思えば...)ある種、哲学者のような......。

迷っているのはボクです。
ソクラテスは......です。
迷っているのはアナタかも知れない。
アナタにとって、ソクラテスは誰ですか?

M4 「TO YOU」

少年達によって引き起こされる哀しい事件。自らの子供を傷付ける親達。コミュニケーションがうまくゆかず悩む親と子。
大人達の問題ととらえた時に生まれた歌です。
背景はもっと複雑で、この詞はある種の理想論かもしれない。
でも忘れてはいませんか?新しい生命と対面して覚えた何ものにも変えがたい歓びに包まれたアナタを。
ホントは最後に「星を見ろ!暗くて明るいだろ?そうだ、それが青春だ!」というセリフのフレーズがあったのですが、コミカルになるのでカットしました。コンサートでのお楽しみ!にしておきましょうね。

M5 「ノスタルジック メロディー」

ねえ、君は何処で何しているの、誰とどんな暮しをしているの。
ねえ、君は何処で何しているの、君のかおり今も覚えているよ。

不器用だったね。
もし、今なら……。幸わせならいい……。
戻せない時だから眩しくて愛しい。

M6 「ワープ」

最初は「葉っぱ」というタイトルでした。時間の移ろいとともに確実に向ってゆく先には...。「ワープ」は時間移動の意味もあります。自分が自分であると自覚した時から始まる死への恐怖や哀しみ、不条理感。
はじめてそれを知った時にボクは「うつ病」のような状態になりました。高校1年の時です。「自覚しない生き物。たとえば貝や草やミミズや花に生まれたかった」と本気で思いました。今でも時々そんな気持ちに襲われる事があります。
しかし、自分が自分であるからこそ感じうるすべての嬉び...。
考えてもらちのあかない事、それが真理だとしても、自分なりの寄り処が欲しくて書きました。

M7 「Can Realize…夢のぬくもり」

自分がこの世界で一番愛しいと思える人。その人、その存在が自分の愛すべき子供だとしたら......素直に無条件に願えるのではないでしょうか、美しい未来を、この地球(ほし)の行く末を。
もう少しの想像力を!!互いに持ち合えたらいいね。想像力こそがあらゆるネガティブな哀しみや危機を救うのだと思って。想像力を思いやりという言葉に換えてもいい。
「気付いた」というより「気付いて」との想いを込めた歌です。
子供のいない人達、親でない人達にも伝わるようにとこの様なストーリーにしました。

M8 「少年の俺へ」

M3の「黄昏れ航く」にも連動した曲。
子供の頃の自分に申し訳けないなァ、と思う事ありません?
ボクはいっぱいある。ピュアじゃない自分を感じた時や物事にあきらめてる自分を感じた時とか....。
「子供の頃に描いていた様な大人になれてるかい?」過去から問いかけてきます、アイツが。
でも、まあ、ホント、「壊れずに」今日まで生きてきたよね、ご同輩!
「キッド」というアメリカの映画を観たのはこの曲が出来た後でした。泣いちゃった。

M9 「MOLDT―氷見にて」

まだ、語れない何かがボクの中にあります。生まれてしまった楽曲だから.....。
タイトルの「MOLD」はひとつの考え方といった意味です。だから、きっと「MOLDU」や「V」もあるのでしょう。
あくまで「ボク個人のひとつの価値観の提示」という意味でこの様なタイトルにしました。それを強調するために生まれた場所(戸籍)まで表明したという...ことです。

M10 「家庭」

新潟テレビ21の夕方ワイド番組「小野沢ゆうこのいきいきワイド」のテーマ曲としてすでに5年ほど以前から流れています。
その頃、我が国では「オウム事件」「いじめ問題の表出化」「バブル後の大量リストラ、失業」等、行き場を失した「心」が色濃く彷徨っていました。
そしてボク自身もいろんな悩みを抱え、時代という気分に翻弄され...漂よい。
そんな時、傷付き、疲れた心の寄り処、アリカは何処にあるのか...。
幾つになっても「夕焼け」は穏やかで優しい、よね。

M11 『海の記憶 「2000年、夏」』

20世紀、最後の年の夏の浜辺の風景を描写、記録しておこう。そんなつもりで書きました。
多くを語らなくても、イイヨネ。
M1「再生」に戻りましょうよ!

そしてまた、ボクは迷い、悩むのであった......。水を下さい。

(P.S.)倶楽部の会報には、もう少し詳しく書くつもりです。ありがとう。