東本願寺・大谷婦人会の機関紙『花すみれ』2011年1月号に

「三尺の童子を拝す」と題した園長の一文が掲載されました。

 

三尺の童子を拝す』

保育園にウサギがやってきた―そして死別

「園長先生、ウサギを飼っていいですか?」。五年前、当時の五歳児クラスの園児たちが事務室にやってきました。「全部自分たちで世話するというならいいよ」と答えると、「ヤッター!」と子どもたち。彼らは早速地元紙に「ウサギを譲ってください」と投稿し、間もなく二匹の子ウサギが保育園にやってきました。それからは自分たちで当番を決め大切に大切に世話をして、年度が替わっても、下の年代の子どもたちに無理なく引き継がれてきました。

ところがその中の一匹『みらい』が病気に罹り、懸命の看病にもかかわらず一昨年二月、みんなの見守る中で息を引き取りました。二年八ヶ月の命でした。子どもたちは泣きながら亡き骸を毛布にくるみ、箱に納めて隣接する本堂に安置し、全員で正信偈のお勤めをしました。翌日は土曜日、十時からお葬式ということで卒園児たちにも声をかけ、保護者も含め大勢が本堂に集まりました。

正信偈のお勤めの後、園長の私が『みらい』の気持ちを代弁する形でお話をしました。「みんなは私が保育園に来てからずっと一所懸命世話してくれたし、病気になってからも汚れたお尻をお湯でやさしく洗ってくれた。そして死んだときも心から悲しんでくれた。私はたった二年八ヶ月しか生きられなかったけれど、生まれてきて、汐路保育園のお友だちと出会えてよかった。世界一幸せなウサギだよ。だから私はもう大丈夫。いつまでも悲しんでいないで、自分たちの幸せのことを考えてみて。あなたたちはお父さん・お母さん、家族の人たちみんな、お友だち、先生たちと出会うために生まれてきたんだ。幸せになるために生まれてきたんだよ。いつもそのことを思っていてほしい」と。

 そして鐘楼門の脇に穴を掘り埋葬しました。墓標も子どもたちが書き、生花や折り紙で作った無数の花々、『みらい』への手紙、好物の人参などが供えられました。

 

死を通して子どもたちが感じ、学び、行動したこと

子どもたちの発案で、一週間後の生活発表会に、お家の人たちと一緒に追悼法要をしようということになりました。プログラムが終わった後ステージにお檀をしつらえ、ご本尊を安置し、周りはめいめいが書いた『みらい』の絵、思い出の文章や写真で荘厳し、五歳児が司会と導師を勤め、ホールに集った全員が一体となって厳粛に営むことができました。 

さらに昨年二月の生活発表会でも、やはり子どもたちの手で一周忌法要を勤め、最後にさだまさしさんの『いのちの理由』(知恩院がさだ氏に依頼して作った法然上人八百年大遠忌のメッセージソング)を斉唱しました。「♪私が生まれてきた訳は/父と母とに出会うため/(中略)しあわせになるために/誰もが生きているんだよ♪」

この歌を初めて聞いたときの園児たち、「『みらい』のお葬式のときにも歌ったよね」。そんなはずはないのです、『いのちの理由』が作詞作曲されたのはお葬式の四ヵ月後なんですから。先の私の話とこの曲が見事に重なり合ったのですね。今年度の生活発表会では三回忌が勤まることになるでしょう。

 

子らこそ私の教主

私は、子どもたちがウサギの飼育と『みらい』の死を通して『いのちの願い』を我がこととして聴き取り、育ちつつあるということ、そしてその子どもたちの姿と関わりの中で、私たち大人自身が育てられているのだということ、これらを実感として強く強く思うのです。

大谷保育協会では「ともに生き ともに育ち合う保育」を目標に掲げています。この意味するところは「ともに生き、ともに育ち合おうね」と子らの方から呼びかけられている私自身を見出すことにあるのであって、こちらから子らに向けて発信するような言葉ではありません。

幼な子こそ「よしあしの文字をもしらぬひとはみな まことのこころ」(正像末和讃)の人、そのまことの人に「善悪の字しりがお」「おおそらごと」(同)のこの私が出会えて初めて「見て敬い得て大きに慶」(仏説無量寿経巻下)ぶと共に、「すなわち我がよき親友」(同)として子どもらに慕われる大人となれるのでしょう。

「三尺の童子を拝す」、これは私の保育の師である故・平井信義先生が、ご自身の子ども学の根っこに据えられている大切なお言葉として直接に教えていただきました。子らに掌を合わせることのできる大人であり続けたい、そう願いながら保育園に通っています。

 

老野生淳一(おいのしょうじゅんいち)

一九四七年、大阪府豊中市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部経済学科卒業。(株)協和銀行勤務を経て二十六歳で得度、仏門に入る。高田教区安専寺住職、汐路保育園園長。

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